飯田圭織ファーストソロライブ「アヴニール〜未来〜」地中海キャンパ

【開演まで】


そぼ降る雨の中、タクシーは無事広尾3丁目交差点に到着した。
都心だと言うのに、意外に静かなところだ。これが東京の魅力だ。
こんな場所にたたずむレストランはさぞかし、おしゃれなところなんだろう。
いわゆる「穴場」だな、などと考えているうちに、すぐにお目当てのレストランが見つかる。
男たちが階段の前に並んでいるからだ。


見なれた光景。でも、「ディナーショーなのに並ばせるなよな・・・・・」


会場は本当に狭いレストラン。
でも、それだけにしつらえられたステージが近いこと・・・・・。


「ここで圭織は歌うのか・・・・。聞く我々より、歌う圭織の方がもっともっと緊張するだろう」と思い遣る。


ふと見やると、ステージにはきちんとキーボードやらギターやら配してある。
生バンドなんだ・・・・・。
普通なら当たり前のことに、感動してしまう、ハロプロファンの悲しい性・・・・。


食事が終わる。
アボガドとまぐろの前菜はおいしかったが、メインのポークソテーとじゃがいもチーズグラタン風は、
どこにでもある代物でいまいち・・・・・。他のレポを見るに、別の日の方が断然良かったみたい。
そんなことより、酒が飲めなくちゃ、どんな料理だっておいしくはならない。


一方、テーブルは見知らぬ赤の他人ばかりでほとんど会話がない。
これが裕ちゃんFCツアーなら、「同志」的な一体感があったりして多少は話しやすいのだが・・・。



【開演】


そうこうするうちに、開演の時間となる。
会場が暗くなり、しばらく時間が流れる。その長いこと長いこと。
そして、ついに圭織登場か!と思いきや、なんとたいせーさん登場。


今回のライブについて、そして圭織がこれから歩もうとする歌手としてのコンセプトについて前口上。
これはつんくさんも指摘した通り、「大人の女性」としての魅力を存分に発揮していくということだ。


「よしわかった。私もその道をしっかりと応援しよう」と決意を新たにする。


そして、たいせーさんの「髪を切った新しい圭織が皆さんの前に初登場です」とか言う
ちょっと意味不明の紹介を受けて、ついに、「ソロ歌手 飯田圭織」の登場だ。
レストランの入り口方向から(したがって客席の背後から)スポットライトを浴びて、登場する。


圭織だ。かおりんだ。美しい。ショートがことのほか似合っている。
青いロングドレスに身を包んだ圭織。麗しい・・・・・。ため息が漏れる。
あのはにかんだような圭織らしい笑顔はない。緊張しているのか、意識的に澄ましているのか。
口元をきゅっと引き締め背筋を伸ばし、
遠くを見つめるその凛とした姿は脳裏に焼き付いて一生忘れ得ないであろう。


そして、いつも圭織を間近で見たときに思う感想だ。「華奢だなぁ・・・・・」。


このとき挨拶があったかどうか記憶にない・・・・・舞い上がっていたのだろうか。


圭織は、そのまま少し緊張の面持ちで、客席の合間をぬってステージに登る。
静かに静かに。そのとき拍手があっただろうか。ちょっと覚えがない。
圭織がゆっくりゆっくりステージに向かって歩んでくる、その姿しか記憶にない。
もう何度目かの登場のはずだが、表情は固い。


最初の挨拶はちょっとのぼせていて記憶が定かでない。


しかし、このスポットライトを浴びた登場から、最初の曲の歌い出しまでの、
時間的にはほんの少しなのに、感覚的には時間が止まってしまったかのような、
長い長い瞬間は一生忘れないだろう。



【第一部】


ついにソロ歌手飯田圭織の歌が始まる・・・・・・。
アンケートにも記入した、「最も印象に残ったステージ」の瞬間だ。


まず、「エーゲ海に抱かれて」
オリジナルが壮大なBGMなので、アコースティック風バックバンドは聞く側としてもやや勝手が違う。
つい合いの手を入れそうになるが押しとどめる。もちろん客席はじっくり耳を傾けている。
圭織の歌は緊張もあるのか、少し伸びやかさにかけるような気がする。
ちょっとばかり心配になるが、無事に1曲目を終わる。とにかく1曲を聞き終えたその満足感・・・・。


2曲目は、「オーシャンゼリゼ


圭織は一転して笑顔を浮かべ、自ら手拍子を促す。
お客さんと、そして圭織自身の緊張感を解きほぐすのだ。
一気に和やかな雰囲気になって、さらに次への期待が膨らむ。


続いて「砂に消えた涙」


おっと!!意表をつかれた。マークをおろそかにしていた。
案の定、家に帰って見ると、ライナーノーツに圭織の感想が書いてない。
しかし、このイタリア語の楽曲はなかなかいい。
「オーシャンゼリゼ」に続き、さらに雰囲気を和らげる感じでGOOD。


この歌も手拍子があったと思うが、曲の終わりに圭織が人差し指を口元に持っていたことに気づかず、
手拍子をとめるのタイミングを失してしまう。「圭織、申し訳ない」と心で謝る。
歌い終わった後、「是非歌いたかった歌」と圭織から紹介がある。
そうだったのか。それならそうと教えて頂戴な。


ここで、おや、オリジナルアルバムからはないのかな、と思う。
そしてやっとこさ気づく。ライブの副題が「地中海キャンバス」だったことを。
完全に勘違いしていた。予想を書いたことが恥ずかしくなる。でも、私は逆に嬉しかった。


オリジナルアルバムが出たことによって、よりいっそう、最初の2枚の良さを再認識し、
圭織の外国語の歌が自分の中で輝きを増していたからだ。
(オリジナルが悪かったということでは全然ないので念のため)、
だから、できるだけ地中海シリーズを聞きたいと本心では思っていたのだ。



愛の種


ここでしばし、トークの時間に入る。
圭織自身の緊張をほぐそうと言う意図から、バンドメンバーを肴にいろいろとお話。


毎日出される料理は、圭織やバンドメンバー自身は食べてはいないが、
圭織の好きな食材やら好みを取り入れて、毎回シェフが考えて作っていると言う。


「ポーク・ロースのロティ 小悪魔風」の命名はシェフによるもので、
圭織が小悪魔に見える風だったからだとか。
後は、アボガドじゃなくて、アボカドなんだと仕切りにバンドメンバーに茶々を入れる圭織。


自分自身も気持ちをほぐそうとする圭織、このあたりの圭織はいつも見ている、
駄じゃれ好きな圭織そのものである。


そして、雰囲気がほぐれたところで、何を歌おうか考えに考えた、と来た。
「来たな、娘。の曲を歌うんだ、何だろう」と期待に胸が弾む。「『たんぽぽ』かなぁ・・・・」


それはなんと、「愛の種」であった。
やはり、モーニング娘。の原点といえばこれしかない、と考えたそうだ。


初日は途中で涙ぐんで歌えず、お客さんに助けてもらったとネットで後日知った。
この日は笑顔で客席を隅々まで歩いて周り、本当にお客さんの間近で歌ってくれた。
圭織は一人一人の顔をしっかりと見つめつつ、ゆっくりと歌いながら客席を回る。
私もそばを通りすぎる圭織を見上げながら、いっしょに口ずさむ。


実は、歌詞をあまり覚えられない私、圭織の卒業を間近に控えた時期に、
愛の種」と「たんぽぽ」はしっかりと歌詞を覚えたのだ。
だから、声に出さずとも、いっしょに口ずさむことができて本当に良かった。


そうして、オリジナルメンバーと多分古くからのファンが多いであろう客席との
一体感が生まれたところで、圭織のしんみりとしたトークに入る。
それはまさにかおりんワールド。歌と同じ位期待していたひとときだ。
まるで、「今夜も交信中」の世界の再現だ。



【今夜も交信中】


テーマは、「歌手飯田圭織の原点」。


もうファンなら当然承知のことだが、子供のころから圭織は本当に歌が好きだった。
それは、今の圭織と同い年のときに両親は自分を生んだこと、そんな若い両親の
音楽好きの影響もあったと語る。


子供のころは、テレビやラジオの音楽番組をしらみつぶしに録画・録音して聞いたこと。
時には、ラジカセをテレビの前において録音したこともあったということ。
お小遣いが少なくて、買えるCDが限られていたので、数多の楽曲の中から、
いったい何を買おうか迷いに迷ったこと。
そして、小学校5〜6年のころ合唱団に入ったこと。
その当時から歌手になりたいという夢が生まれたこと。


今、なぜここに「歌手飯田圭織」がいるのか、
それはファンにその原点を知ってほしいということとに加え、
自分自身も、これから歩もうとする歌手として道を確かめるための回顧であったと思う。


ここで、たいせーさん以外のバンドマン3名が舞台袖にはける。
そして、トークのBGMに荒井由美の「卒業写真」。
圭織が歌手を夢見たのも、元を正せば歌が好きなご両親のおかげ。
そんな話の流れから、ご両親がよく聞いていて自分も好きになったという「卒業写真」を歌う。


バックはたいせーのキーボードのみ。
圭織は用意されたチェアに座り、ほぼアカペラ状態の口ずさむような肩の力が抜けた歌。
いろいろな趣向が凝らしてあって、感心する。


この後、圭織が敬愛する松田聖子さんの「あなたに逢いたくて」を歌う。
私が好きな松田聖子と、圭織が好きな松田聖子は時代が違うのだけれど、同じ松田聖子好き同士。
思う存分大好きな歌を歌える圭織は幸せだなと思う。



【リラの季節】


その後、ゲストのルカさんの登場。小柄だ。
圭織の衣装変えの間、持ち歌の2曲を披露。
声量、ため、などの点でやはり一日の長がある感じ。
だからこそ、圭織自身の歌も、技巧という点でまだまだ進歩の余地があると感じる。


そして圭織が衣装を替え登場。
これか、これがつんくの言う「谷間」か!
そう、より胸元を強調した薄いグリーン系(うぐいす色?)のドレスが、またシックで似合っている。


せっかくだから二人で何か歌おう、ということになる。
「別にいいのだが」と内心思いつつ、催促の拍手を送る。


「では『Wink』を歌います。」


その瞬間、会場からくすくすと笑いが・・・・。


この客席の雰囲気にたいせーがすぐさま反応。
「そんなおかしい選択か?」といった風の一言。
でも、圭織がWinkを歌うのには必然性があるのだ。圭織は小さいころWinkになりたかった」のだから。


淋しい熱帯魚」を二人はお決まりの振りつけも控えめに交えつつ楽しそうに歌い終わり、
ルカさん退場。そして、しばし2月に10日間ほどフランスとイタリアを旅してきた話を始める。
(旅行の話がこの箇所だったかどうか定かでないが、一番流れ的に絶妙な位置に入れてみる)


やっぱり〜、行ってたんだ〜と思う。圭織、念願のフランスに行けて良かったね(^^
そしてその感想は、「やはりパリは本当に素敵な街だった。
そしてローマは、遺跡がぽつんと普通の町の中に残されているのがとても印象に残った」と語る。


遺跡というのは、そのあたり一帯が昔のまま残されている、そんな先入観を持っていたという。
普通の街の中に、貴重な遺跡がその場所だけぽつんと昔のまま丁寧に保存されている、
そんな風景に、イタリアの人たちの自分の国を思う心の温かさややさしさを感じたと圭織は切々と語る。


あぁ〜、これこそがかおりんワールドではないか・・・・・・・
こういう圭織を待っていたんだと、気づく。そのみずみずしくて不思議な感性が本当に好きなんだ。


そんなしみじみとした話の流れから、次の曲に入る。
それは、なんと「リラの季節」である。
ついに、ついに、この歌が聞ける!その感動!
圭織は切々と歌い上げる。本当にいい歌だ。
圭織自身が詩を読んで涙したという、そんな圭織の純真な思いが伝わる。


歌い終わって、切々と語る。ちょっと記憶がかなりあいまいなのだが、
この詩に出てくるように、子供たちを大切にしたい、子供たちにやさしく接してあげたい、
大事にしたい、そんな自らの気持ちを語る。


そしてこの後、今日は特別にゲストが来ています、と圭織から紹介がある。



【ゲストの部】


「そうか、毎回誰かゲストが来ているんだ」と、すべての情報を遮断してこの日の
ライブに臨んだ私は初めて気づくとともに、
「初回はつんくさんか、その後は誰だったんだろう。今日は果たして誰?
裕ちゃんだったらいいのにな・・・・」と考えをめぐらす。


そしてそのゲストは、なんと、盟友安倍なつみ


この瞬間、他の日は誰だったか知らないが、「やった!22日は『勝ち組』だ」とほくそえむ。


なっち登場で、一気に会場が明るくなる。本当にひまわり娘だわ・・・・。


なっちをこんなに至近距離で見るのも久しぶりだ。もちろん、本当にかわいらしい。
でも、ここは飯田圭織のソロライブ。


私にとって、何が嬉しかったと言って、二人で「ふるさと」を歌ってくれたこと。
飯田圭織がハーモニーを引き受けたこと!


「ふるさと」の生ハーモニーっ!
おそらく、生ハーモニーは「ポップジャム夏休みスペシャル」以来、2度目だと思う。
何せ、TV番組やライブでは多分歌っているのは、なっちだけである(ハーモニーは原則としてオケ)


正直なところ、飯田圭織個人にとって、この曲のもつ意味合いはそう大きくはない。
(もちろん、娘。にとっては最重要だが)
あくまで、ゲストなっちのための曲であるが、圭織の美しいハーモニーが聞けるとは。
ハーモニーを担当する圭織を凝視する。
そしてなっちのメインに引きずられないように、圭織のハーモニーに全身全霊を傾けて耳をそばだてる。
すばらしい〜。本当にすばらしい。


そんなこんなで、一気に場を明るくしたなっちもトークと1曲ではける。
(すみません、圭織が暗い、っていう意味じゃない。なっちがとにかく明るすぎるのだ)
圭織も語る。「なっちといると、15歳に戻った気分になるの」


ちなみに、なっちとのトークは、オーディション当時の話が中心で、ファンならほぼ知っている内容。
ただ、「同じ病院で生まれた」とかの内容にたいせーが一番驚く。



【クライマックス】


なっちが退場、楽しいひとときが過ぎ去った後、いよいよこれからが今日のライブのサビ部分に突入だ。


「オサブリオ」と「シェルブールの雨傘」を続けて披露する。


本当は歌の感想こそもっともっと具体的に書けなければいけないのだが、
ただひたすら歌声に酔っていただけで、表現する力がないのが悔しい。
印象に残るのは、高音部をロングで歌い上げる部分の心地よさ。
そしてとにかくファルセットの美しさ、圭織の声のもつ美しさ。


シェルブールの雨傘」は、なぜこの曲を聴きたい候補に挙げていなかったのが不思議だ。
特に、終盤のささやきが壮大に盛り上がっていく部分、
本当に本当に美しい生の歌声にしびれてしまう。


そしてラストは「バラ色の人生」


そう、昨年2月の渋谷公会堂イベントの際、掛け声やら合いの手で結構うるさかった客を
ついには、自らの歌の力で自らの世界に引き込み、会場をしんとさせてしまった、真打ちの登場だ。
この曲でライブを締めくくるのは、本当に正解、というかこれしかないだろう。


どの歌にも共通するのは、語るような部分では圭織のやさしさが感じられ、
抑えた部分では、圭織の最大の魅力である「切なさ」が表れ、
高音部分ではこの地中海シリーズで新たに自分のものとした、深みのあるファルセットの世界、
本当に酔わせてもらった。


何よりも、今ここのこうして圭織の歌を聴いているその事実自体がまさに夢のよう。
現実なのに夢うつつ。


だから、もう一度、もう一度ライブを聞くことができれば、
もっともっと真実を掴み取れるようなそんな気がしてくる。再追加公演当たっておくれ・・・・・。



【お見送り】


アンケートを記入し、順番に出口に向かい、圭織と握手&ポラロイド撮影。
みんな、アンケート書くのに必死で、なかなか席を立たない。
圭織のこと好きなんやな〜、とちょっと感動する。


いよいよ私の順番。どの曲が良かった、と具体的な感想を述べ、握手。
今でもあの瞬間二人で並んでいたなんて信じられない、そんな夢のような瞬間。
二人で撮ったポラロイドは本当に宝物。


本当にこうやって歌をきちんと歌わせてもらえる圭織は幸せ。良かったね。
そして圭織の歌をゆったりと聴ける私たちはもっと幸せ。


毎週あれば毎週でも訪れたい。
また、あなたに会えますか。